色とりどりの公演が
連休最終日の5月6日は、気軽にクラシックに親しんでもらう日。6つの公演がそれぞれ500円で次々に行われました。
スタートはピアニストの三浦舞夏さんによる「0歳のための音楽会」。幼い子どもたちも一緒に、様々な曲を楽しみながらピアノの仕組みなどのお話も。演奏に交じって、歓声や泣き声も響き渡ります。クラッシックの名曲から、みんなで歌う「きらきら星」まで、あっという間の時間でした。
続いて、「吹奏楽スーパーコンサート」。小中学生あわせて170人もの大編成で、コンサートホールの舞台の上は身動きできないほどです。170人が集まって練習するのは大変だったということですが、小学生は中学生に、中学生は別の学校の生徒に刺激を受けながら、腕を上げていったということです。映画やディズニーなど親しみのある曲を中心に、息のあった爆音がホールを包みました。
合唱も負けていません。「みやざきSPECIAL CHORUS」では、大人の女性合唱と、小中高校の合唱部が歌声を響かせました。変声前の児童の澄んだ声、声変わりして間もない中学生の合唱、乱れのない高校生と大人の合唱、そして最後に5つの団体合同での合唱と、様々な歌声を楽しめました。
オーケストラの演奏は、「宮崎国際音楽祭ジュニア・オーケストラ」。宮崎ジュニア・オーケストラを中心に、延岡ジュニアフィルハーモニー、都城や宮崎などから公募で集まった学生などで編成されました。映画やバレエ、クラシックの名曲などを演奏。荒木流音生(るねい)さんの指導・指揮のもと、練習するたびに息と音が合うようになっていったということで、本番ではコンサートホールに詰めかけた大勢のお客さんを満足させる演奏となりました。
そしてこの日、観客をうならせたのは、清水和音さんと、有吉亮治さんのピアノ。
昼間の3番目の公演では、2台のピアノを使ってモーツアルトとブラームスなどの曲を二人で演奏するデュオピアノ。
夕方の最終6番目の公演はそれぞれによるソロピアノ。有吉さんがリストとラヴェルの曲を、清水さんがムソルングスキーの曲を披露。演奏後は「凄かったねえ」「とにかく迫力」などの感想があふれていました。終演後、清水さんからは渾身の演奏後の爽やかさを、宮崎出身の有吉さんからは、故郷での演奏をやりきった充実感のようなものを感じました。
気軽にクラッシックをという一日は、演奏に参加した大勢の人たちの、熱に満ちあふれた一日になりました。





「The Piano Duo」

「The Piano Duo」

「The Solo Piano」

「The Solo Piano」
5月8日はこどものための音楽会。県教育委員会の協力で、県内の小学6年生およそ2400人が、午前と午後に分かれて、オーケストラの演奏を楽しみました。
今年のテーマは動物と音楽。様々な動物を表現してきた音楽を、楽器の紹介もしながらたどっていきます。オーケストラは、国内外で活躍する一流の演奏家が集結した宮崎国際音楽祭管弦楽団で、指揮は大井駿さん。迫力と繊細さを兼ね備えた音がコンサートホールに響きわたりました。親しみのあるクラッシック曲の数々のほか、こどもたちも大きな声で参加し歌い上げる「森のくまさん」も。県内全ての小学6年生が劇場に来ることはできないため、午後の公演は、教育委員会を通じて各学校にライブ配信されました。



オーケストラのメンバーも驚いていたのは、子どもたちの元気の良さ。大きな拍手や歌声に、時折歓声も加わり、終了後「宮崎の子どもは本当に元気だな。逆に力をもらった」と話されていました。
5月9日は、音楽祭の関連コンサート。
佐渡裕さんが指揮するオーストリアのトーンキュンストラー管弦楽団に、反田恭平さんのピアノが加わりました。雨足が強まる夜の公演でしたが、大勢のお客さんがコンサートホールに詰めかけました。
モーツアルトのピアノ協奏曲にマーラーの交響曲第5番などが演奏。反田さんの繊細で優しさと強さが織りなすピアノと、迫力あるオーケストラ。トーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督を10年つとめてきた佐渡さんにとって、集大成となる日本公演ということで、終演後、拍手が鳴り止みませんでした。
5月10日はヴィバルディの四季を、アニメーションとともに楽しむ公演。東京藝術大学の協力で実現したもので、演奏にあわせてAIが自動的にアニメーションを展開していきます。演奏は季節ごとに、北田千尋さん、尾張拓登さん、城戸かれんさん、吉江美桜さんのソロに、宮崎国際音楽祭室内アンサンブル。
演奏のテンポにあわせてAIが映像を展開していく仕組みの解説や、ゆっくり演奏したり、早く演奏したりすると映像がどう変るのかが、実演も交えてわかりやすく説明されました。
そして、四季の演奏。季節ごとに、4人のアーティストに自由に映像を制作してもらったということで、味わいの違うアニメーションが、演奏にあわせて展開していきます。
映像が面白すぎて没入したり、素晴らしい演奏にふと我に返って演奏者に見入ったりと、なかなか忙しい時間が過ぎていきます。



演奏後お客さんからは「楽しかった」「初めての体験」、「夏のアニメが良かった」「秋がおっさんテイストで笑えた」、「演奏と映像、どちらに集中すればよいのか戸惑った」など様々な感想が。近くの席にいた幼いお子さんは、秋のアニメで、席から立って体を動かすなど、初めての体験をそれぞれが楽しんだ公演でした。
5月11日は、オーケストラの演奏でポップスを楽しむ、ポップス・オーケストラinみやざき。デビューから半世紀にわたって活動を続ける、ユーミン松任谷由実さんと、中島みゆきさんの、二人のアーティストの曲の数々です。
演奏は大井駿さん指揮の音楽祭管弦楽団。歌はミュージカルなどで活躍する、島田歌穂さん、海宝直人さん、そして宮崎県出身の元宝塚の咲妃みゆさん、司会は三宅民夫アナウンサーです。
みなさんから寄せられた「思い出の曲とエピソード」を三宅アナが紹介しながら、ユーミンと中島さんの曲が、コンサートホールに広がっていきます。
会場のスクリーンには歌詞が映し出され、観客のみなさんも、自分の人生に想いをはせているのか、時々うなずいたり、くちびるを動かしたりしながら、聴き入っていました。
歌い手3人のファンなのか、首都圏や九州各県など遠方からのお客さんも多く、素晴らしい曲と演奏、歌声に、スタンディングオベーションで応えていました。



世界的な指揮者、チョン・ミョンフンさんが来日し、12日から練習が始まっています。少しだけのぞかせてもらいましたが、演奏をこまかく止めながら、時間をかけて丁寧に、そして厳しくやさしく。オーケストラメンバーも緊張と充実した表情です。 そして12日の夜、チョン・ミョンフンさんが、世界最高峰のオペラの殿堂、イタリアのミラノ・スカラ座の音楽監督に2027年から就任するというニュースが飛び込んできました。スカラ座の音楽監督就任はアジアからは初めての画期的なことだということです。これからの公演がますます楽しみになりました。
(写真:K.Miura)
この記事を書いた人

松坂千尋(まつざか ちひろ)
2024年6月末から宮崎県立芸術劇場の理事長兼館長。