クラス合唱と遠くにいる君
館長のつぶやき
「あんたは音がずれるから、口パクパクでいってね!」
中学3年のクラスメイトと集まると、ある男子の同級生がたびたびこの話をしていた。宮崎市大淀中時代にクラス対抗の合唱大会が開かれ、私たちのクラスは優勝か優秀かなんかで、市の大会に出た。会場は、市役所近くの市民会館だったと思う。指揮者とピアノ演奏はともに女子で、これは良く覚えている。冒頭の男子同級生は、この市の合唱大会の際に、「全体の調和が乱れるから、歌わずに口パクで臨まされたんだ」と悔しそうに、でも楽しそうに繰り返していた。
秋、劇場では高校の文化祭や中学の音楽関係の催しなどが行われている。


ある高校ではクラス対抗の合唱が行われていたが、最後の講評で先生が「三年生の合唱は息が合っているだけでなく、思いがこもっていた。あなたたちにとって、おそらく最後のクラス合唱でしょう」と話されていた。
“クラス合唱” 大学でやる人はまれだと思うので、小中高時代にしか体験できない貴重な時間なんだなあと思った。
冒頭の口パクの中学時代の同級生は、大人になってからは歌がとても上手で、カラオケで次から次に十八番を披露していた。その彼が、一年前の9月に急逝した。クラス合唱の思い出をしきりに話していた彼。遠くでみんなと歌っている姿と声が浮かんでくる。
※9月25日に宮崎市の市民文化ホールで、ポーランドの国立放送交響楽団とピアニストの角野隼斗さんの公演が行われました。アンコールの最後は、おなじみのハンガリー舞曲。マリン・オルソップさんの指揮に合わせて、会場も拍手で演奏に加わるフィナーレで、宮崎のファンの熱気と歓待の心を感じました。
この記事を書いた人

松坂千尋(まつざか ちひろ)
1957年宮崎県延岡市生まれ。小学校から高校まで、宮崎市、日南市、東郷町(現日向市)在住。
2024年6月末から宮崎県立芸術劇場の理事長兼館長。
2024年6月末から宮崎県立芸術劇場の理事長兼館長。