『アンティゴネ』について

以前、『アンティゴネ』を書いたソフォクレス、そして『アンティゴネ』を話すには欠かせない父オイディプスについてご紹介しました。

ソフォクレスと『オイディプス王』の紹介はこちら

今回は、『アンティゴネ』のあらすじをご紹介したいと思います。

父だけでなく、兄も亡くしたアンティゴネとイスメネ

アンティゴネの父オイディプスは、テーバイ(都市国家のひとつ。オイディプスが王だった国)から放浪の旅に出た後、この世を去ってしまいます。(『コロノスのオイディプス』)

父の旅につきそっていた、アンティゴネとイスメネ。アンティゴネらがテーバイに戻ると、2人の兄たちポリュネイケスとエテオクレスが亡くなっています。王位にあったエテオクレスと、王位を奪おうとしていたポリュネイケスが王位争いの末に亡くなり、アンティゴネの叔父クレオンがテーバイを治めます。

▲簡易の家系図。

はじまりは、一つのお触れから

そして『アンティゴネ』は、王となったクレオンがあるお触れを出したことから始まります。それは、王位にあったエテオクレスは丁重に埋葬し、反逆者の立場にあるポリュネイケスの遺体は埋葬してはならない、というもの。

これに、アンティゴネは憤慨。実の兄の遺体が野晒しにされています。埋葬できずに外に放置するなんておかしい!そこで、妹のイスメネに協力をお願いするも、イスメネは姉に諦めるよう説得を試みますが、暖簾に腕押し。

人間の法と自然の法

そしてある日、兄をこっそり埋葬しているところが見つかってしまったアンティゴネは、王のもとに連れてこられます。クレオンは国の安寧のために決めた「人間の法」を遵守すべきだと主張するのに対し、死者を、実の兄の遺体を埋葬するのは自然なことである、神々が決めた「自然の法」を尊重すべきだと主張するアンティゴネ。折り合いはつかず、アンティゴネは牢に入れられることになります。

自分の主張を曲げないクレオンを、その息子ハイモンが説得しようとします。ハイモンは、実はアンティゴネの婚約者で、民衆からもアンティゴネを案じる声があることを父に進言しますが、父は頑として聞きません。

時すでに遅し、連鎖する悲劇

そんなクレオンの意見を曲げさせたのは、預言者テイレシアス。神々の法を破り、遺体を埋葬しなかったことがどんな禍いをもたらすかを言われ、クレオンはアンティゴネを牢から出そうと慌てて牢に向かいます。しかし、時すでに遅く、アンティゴネは首を吊って自害しています。

彼女のそばにいたハイモンは、父クレオンを見つけると怒りにまかせ斬りかかろうとします。しかし、クレオンはこれをかわします。ハイモンは父を斬り損なった自分に怒りを向け、自分に剣を突き刺して倒れます。そして、この息子の死を聞いたクレオンの妻エウリュディケも自害し、クレオンが悲しみに暮れて物語は終わります。

約2500年もの時を経て伝わる普遍性

約2500年前に書かれた作品ではありますが、現代でも上演され続けているのは、アンティゴネとクレオンの対立が普遍性を持って、我々に訴えかけてくるからだと思います。権力ある人間が国のために決めた法と、自然(=神々)が決めた法の対立だけでなく、男性と女性、老いと若さなど、さまざまな対立構造が垣間見えます。

そして、対立するクレオンとアンティゴネを中心に、その周りでクレオンのお触れがおかしいと思いながらも、太鼓持ちのような皮肉るような発言をしたり、クレオンのご機嫌を伺ったり、権力に対しておべっかをつかう人間や、権力には抗えないと諦め受け入れる人間(イスメネ)などが描かれています。

詳細が気になる方は、ぜひ本を手に取って読んでみてください!
あわせて『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』も読むと、作品の理解が深まって、より楽しめること間違いなしです!

『きっとアンティゴネ』の詳細はこちら

この記事を書いた人

Tatsuro Aoyagi(あおやぎ・たつろう)
辰年、大晦日生まれ、やぎ座、三男、2児の父です。東京生まれ東京育ちで、紆余曲折あり宮崎生活7年目。東京生まれ東京育ちと言うと、信じてもらえません。

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