年末の二つの公演
「もう一度みたい」という思いにとらわれました。
12月22日に、高千穂町で開催した公演の終了後です。「の、まど」in高千穂『舞い、奏で、彩る高千穂』というこのイベント。当劇場と高千穂町教育委員会、障がいのある方の自立支援などを行っている高千穂町のNPO法人「一歩会」と「彩り」が連携して行われました。
町の人たちも加わって半年間にわたって練習を重ね、ダンス作品を創り上げます。演出・振り付けはダンサーの黒木裕太さん、音楽はピアニストでもある志娥慶香さん、美術は松下太紀さん。
テーマは高千穂町の自然や暮らし。オリジナルなダンスと音楽で、高千穂の四季、高千穂峡、あまてらす鉄道、天岩戸などが次々に表現されていきます。ダンスに使われる美術も手作り。クライマックスには、高千穂高校美術部が制作した驚きの「龍」も降臨です。
障がいがある人たちが、自分たちで作った大道具小道具を巧みに、人によっては思い思いに動かしながら、全身で表現していきます。
見に来た人たちからは、「高千穂のいろいろな情景や風景がちりばめられている」「表現も個性、障がいも個性、個性の融合が素晴らしい」「一生懸命作り上げた作品」などの感想が。
私は感銘を覚えると同時に、「本番に至る過程も見ておくべきだった」「必要最小限のナレーションがあればもっと良かったかなあ」、そして「もう一度見たい」という思いにとらわれた訳です。
撮影:宮崎県立芸術劇場
プロジェクト「の、まど」 in 高千穂『舞い、奏で、彩る高千穂』 成果発表公演ページはこちら>> https://miyazaki-ac.jp/event/2024/23905/ また、『舞い、奏で、彩る高千穂』の公演の様子が、夕刊デイリーに掲載されました。 以下のリンクより誌面掲載の内容をご覧いただけます。 http://www.yukan-daily.co.jp/news.php?id=106521 本番のダイジェスト映像も劇場YouTubeにて公開予定ですので、楽しみにお待ちください。 |
年末の公演をもう一つ。
去年のクリスマスイブ、宮崎駅から列車で川南に向かいました。乗り鉄ではありませんが、子どもの頃から汽車に乗るのは好きです。車内は夕方とあって、通学の高校生などで混んでいました。
川南までに幾つかある無人駅では、ワンマン列車の先頭車両の最前方から降りる必要があります。スマホに夢中だったのか、仲間との話に夢中だったのか、あわてて先頭車両にダッシュしたものの、間に合わなかった男子高校生。気を取り直して、次の駅で降りていった姿が、何となく微笑ましく思えました。
川南駅に着き、シャトルバスに乗って向かったのは、サンA川南文化ホール。モーツァルト音楽祭の会場です。毎年12月のこの時期に開催され、24日のこの日はコンサートⅡが開かれていました。
まずは地元の中学生と高校生による吹奏楽フェスティバル。入学して楽器を始めたという中学1年生も楽しそうに、見事に演奏していました。
植田克己さんのピアノに続いて、オーケストラによる演奏。モーツァルトの交響曲第35番ハフナーと、この音楽祭のアドバイザーだったオーストリアのバルドウィン・スルツァーが川南のために作曲した「モーツァルティァーナⅡ」。日本モーツァルト青少年管弦楽団とその卒業メンバーを中心にしたモーツァルト・カンマーオーケストラの演奏が、力強く美しく響き渡りました。
モーツアルト音楽祭も22回目とのこと。実行委員会の方々や、音楽監督の馬込勇さんなどの熱意と尽力を感じます。何より、コストや労力がかかる公演を地域で長年続けてきた原動力は、地元の方々と、足を運んでくださる方々だと思いました。
18時からの公演は、休憩を挟んで20時過ぎに終了。余韻に浸りながら帰途につきました。
この記事を書いた人
松坂千尋(まつざか ちひろ)
宮崎南高、東大卒。記者としてNHKに入局し、ニュース7NW9編集責任者、社会部長、編成、広報、経営企画、専務理事などをつとめ2023年4月退職。
2024年6月末から宮崎県立芸術劇場の理事長兼館長。