カンムリウミスズメと劇と映画
カンムリウミスズメ。全長20数センチ、小さなペンギンのような愛くるしい海鳥です。国指定の天然記念物で絶滅危惧種、宮崎県門川町の「町の鳥」でもあります。このカンムリウミスズメなどが描かれた防波堤の壁画が、門川町庵川(いおりがわ)地区の海岸にあります。「わんぱく壁画」と呼ばれるこの壁画、毎年、町内の小学校6年生を中心に描かれてきました。
1月25日(土)と26日(日)。
この壁画などをテーマにした、演劇と短編映画が門川町総合文化会館で上演・上映されました。門川ふるさと文化財団と、当劇場が共同で企画したもので、劇と映画を続けてストーリーをつむいでいくのは、全国的に見ても珍しい取り組みだと思います。
「うみのらくがき」と題された劇は、壁画が始まった平成4年(1992年)の門川が舞台です。絵を描くのは町の小学校の子どもたち。親の関係で転校を繰り返さざるを得ない、おとなしいけれど絵が大好きな女の子を中心に話が進んでいきます。町の活性化や子どもたちに貴重な体験をと、壁画作りを進める町役場の職員。防波堤が汚れるなどと最初は反対するけれど、思い出作りの大切さなどを理解し、協力してくれる町の人たち。
演じるのは、門川町で演劇を行っている、かどがわ演劇の広場「かどっこ」の受講生の子どもや大人たち。芸達者な大人に交じって、子どもたちの演技は自然であると同時に、元気と迫力があり、演じている楽しさが客席に伝わってきます。劇には、現代からタイムスリップした人や、庵川の浅瀬にある小島に住むお姫様も登場します。
ラストは防波堤に思い思いに壁画を描くシーン。転校することになった主人公の女の子も、仲間と一緒に絵筆を走らせます。
-1024x681.jpg)





撮影:宮崎県立芸術劇場
ここまで劇を見ると、「どんな壁画なのかなあ」「見たい、見たい」という気持ちが強くなります。ここで舞台は、映画の上映に変わります。「ぼくらのキャンバス」という短編映画、時代は30数年たった現在の門川。海岸の壁画のシーンから展開していきます。主人公は以前壁画を描き転校していった女の子、今は一人の小学生の男の子の母親です。女性は短い間だったけれど、思い出が詰まった門川に戻ってきて、それから・・・・というストーリーです。演じるのは演劇にも登場した「かどっこ」のメンバーや、公募で選ばれた方々、町の人たちも出演しています。
-1024x681.jpg)


撮影:宮崎県立芸術劇場
劇と映画を見た後、本物の壁画を見たくなり、庵川海岸に足を伸ばしました。防波堤には「ふるさと門川」をテーマにした絵が延々と描かれています。とはいってもスペースにも限りがあるため、描いた子どもたちが成人式を迎えた年になると、その上から、新しい6年生が絵を描いていくそうです。わんぱく壁画が始まって30年余り。これからもずっと続いていくのでしょう。




劇と映画が一体になった今回の公演。どちらか一方だけではその魅力が十分伝わらないとも思いますが、短編映画についてはyoutubeで公開する予定ですので、ご覧ください。
ところで壁画にたくさん描かれているカンムリウミスズメですが、門川町のホームページによると一年中見ることができる訳ではありません。映画にも登場する門川の沖合の枇榔島(びろうじま)周辺に、春が近づくと姿が見え隠れし、5月下旬頃にはどこかへと旅立っていきます。繁殖期には枇榔島周辺に約3000羽が生息し、これは世界のカンムリウミスズメの約半数にあたるとのこと。何より驚くのは巣立ちの仕方で、ヒナは生まれた翌日に巣立ちを始め、高さ50メートルもの断崖絶壁を転げ落ちながら海へ向かうそうです。親鳥は海でじっとヒナを待ち、ようやく海にたどりついたヒナと一緒に洋上の旅へと出発していくそうです。
門川町の町の鳥であり、町のマスコットキャラクター「かどっぴ-」「がわっぴ-」にもなっているカンムリウミスズメ。絶滅危惧種であるこの鳥を、門川の美しい海とともに、大切に守り続けて欲しいと思いました。