室内楽の秘密って・・・

館長のつぶやき

30回目の宮崎国際音楽祭、当劇場を会場にした公演も始まっています。

 

4月29日は、三浦文彰新音楽監督が解き明かす「室内楽の秘密」。三浦監督のヴァイオリン、清水詩織さんのチェロ、髙木竜馬さんのピアノ、そこにアナウンサーの中井美穂さんの巧みな掛け合いが加わりました。

第一部は、まずベートーヴェンのピアノ三重奏曲のためのアレグレットの演奏。続いて、それぞれの楽器の仕組みや裏話、そして第二部で演奏するメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番についての興味深い話が披露されました。メンデルスゾーンの曲の4つの楽章のそれぞれの特徴、どのようなテンポや想いで演奏しているかというお話、「ここは自分が目立つ!際立つ!」と思って弾いている箇所など、聞いたことがない話が次々に出てきます。

加えて、見所や聞き所の箇所についての短い演奏も披露され、会場のお客さんからの質問に答えるコーナーも。秘密の話は50分くらい続きましたが、あっという間に感じる興味深さと面白さ。

演奏後、三浦さんと髙木さんも、トークであんなに時間が経っているとは思わなかったと、話されていました。

 

休憩をはさんだ後の第二部は、いよいよメンデルスゾーンの演奏。第一部で聞き所や、各演奏者が力を入れている箇所、この部分ではこんな技術を見て聞いて欲しいという秘密のツボを知ってしまったため、これまでに味わったことのない面白さを感じながら曲を満喫することができました。秘密を聞いた後の演奏は、やっぱりひと味違います。

 

4月27日は、元サッカー日本代表の澤穂希さんをゲストに、澤さんのこれまでの歩みを、心に残る音楽を交えてたどる「Oh!My!クラシック」。

幼い頃、男の子に混じってサッカーを始め、15歳で女子サッカーの日本代表に選ばれたこと、アメリカのチームに所属して技術や強い当たりを磨いた時代。幾つかのオリンピックを経て次第に強くなっていった日本代表、世界一になった2011年のサッカーW杯、引退後の私生活を含めた現在までを、エピソードを交えて語ってくださいました。司会はMRTの川野武文アナウンサー、時には漫才のような楽しく活発なやりとりが続きました。

 

澤さんといえば、日本中を熱狂させた2011年のW杯アメリカとの決勝戦。敗戦濃厚な延長後半、コーナキックにあわせた澤さんのボレーシュートで同点に追いつき、PK戦での勝利。そのゴールと勝利は、その年の3月に東日本大震災に襲われ重苦しさが残っていた日本に力を与え、多くの人たちを勇気づけました。

高い技術を結集した奇跡的ともいえるゴールについて、澤さんは、コーナーキックを蹴った宮間あや選手をはじめ、チームメイトとの連携あってこそだと強調されました。またPK戦になった時、自分は苦手だからと辞退し、チームが笑いに包まれて和気あいあいとなったエピソードも語ってくれました。

 

楽しい話の合間に、サッカーでチームを応援・鼓舞する時などに使われる、ヴェルディの歌劇アイーダの凱旋行進曲や、誰もが耳にしたことがあるロッシーニのウィリアム・テル序曲、澤さんの心に残った歌などが披露されました。

この記事を書いた人

松坂千尋(まつざか ちひろ)
1957年宮崎県延岡市生まれ。小学校から高校まで、宮崎市、日南市、東郷町(現日向市)在住。
2024年6月末から宮崎県立芸術劇場の理事長兼館長。

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